『韓国併合ニ関スル詔書』

『韓国併合ニ関スル詔書』(明治43年8月29日:原文)

朕東洋ノ平和ヲ永遠ニ維持シ帝国ノ安全ヲ将来ニ保障スルノ必要ナルヲ念ヒ又常ニ韓国カ禍乱ノ淵源タルニ顧ミ曩ニ朕ノ政府ヲシテ韓国政府ト協定セシメ韓国ヲ帝国ノ保護ノ下ニ置キ禍源ヲ杜絶シ平和ヲ確保セムコトヲ期セリ

爾来時ヲ経ルコト四年有余其ノ間朕ノ政府ハ鋭意韓国施政ノ改善ニ努メ其ノ成績亦見ルヘキモノアリト雖韓国ノ現制ハ尚未タ治安ノ保持ヲ完スルニ足ラス疑懼ノ念毎ニ国内ニ充溢シ民其ノ堵ニ安セス公共ノ安寧ヲ維持シ民衆ノ福利ヲ増進セムカ為ニハ革新ヲ現制ニ加フルノ避ク可ラサルコト瞭然タルニ至レリ

朕ハ韓国皇帝陛下ト与ニ此ノ事態ニ鑑ミ韓国ヲ挙テ日本帝国ニ併合シ以テ時勢ノ要求ニ応スルノ已ムヲ得サルモノアルヲ念ヒ茲ニ永久ニ韓国ヲ帝国ニ併合スルコトトナセリ

韓国皇帝陛下及其ノ皇室各員ハ併合ノ後ト雖相当ノ優遇ヲ受クヘク民衆ハ直接朕カ綏撫ノ下ニ立チテ其ノ康福ヲ増進スヘク産業及貿易ハ治平ノ下ニ顕著ナル発達ヲ見ルニ至ルヘシ而シテ東洋ノ平和ハ之ニ依リテ愈々其ノ基礎ヲ鞏固ニスヘキハ朕ノ信シテ疑ハサル所ナリ

朕ハ特ニ朝鮮総督ヲ置キ之ヲシテ朕ノ命ヲ承ケテ陸海軍ヲ統率シ諸般ノ政務ヲ総轄セシム百官有司克ク朕ノ意ヲ体シテ事ニ従ヒ施設ノ緩急其ノ宜キヲ得以テ衆庶ヲシテ永ク治平ノ慶ニ頼ラシムルコトヲ期セヨ
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<読みくだし文:1910年8月29日>

 朕(ちん)、東洋の平和を永遠に維持し、帝国の安全を将来に保障するの必要なるを念(おも)い、また常に韓国が禍乱の淵源たるに顧(かえり)み、曩(さき)に朕の政府をして、韓国政府と協定せしめ、韓国を帝国の保護の下(もと)に置き、禍源を杜絶(とぜつ)し、平和を確保せんことを期せり。

 爾来(じらい)、時を経ること四年有余、其の間、朕の政府は、鋭意、韓国施政の改善に努め、その成績、また見るべきものありといえども、韓国の現制は、なおいまだ治安の保持を完(まっとう)するに足らず。疑懼(ぎく)の念、毎(つね)に国内に充溢(じゅういつ)し、民、その堵(と)に安んぜず。公共の安寧(あんねい)を維持し、民衆の福利を増進せんが為には、革新を現制に加うるの、避(さ)くべらざること瞭然(りょうぜん)たるに至れり。

 朕は、韓国皇帝陛下と与(とも)に、この事態に鑑(かんが)み、韓国を挙(あげ)て、日本帝国に併合し、もって時勢の要求に応ずるの、やむを得ざるものあるを念(おも)い、ここに永久に韓国を帝国に併合することとなせり。

 韓国皇帝陛下、及びその皇室各員は、併合の後といえども、相当の優遇を受くべく、民衆は直接、朕が綏撫(すいぶ=安んじいたわる)の下に立ちて、その康福(こうふく)を増進すべく、産業及び貿易は、治平(ちへい)の下に顕著なる発達を見るに至るべし。しかして、東洋の平和は、これによりて、いよいよその基礎を鞏固(きょうこ)にすべきは、朕の信じて疑わざる所なり。

 朕は、特に朝鮮総督を置き、これをして朕の命を承(う)けて、陸海軍を統率し、諸般の政務を総轄(そうかつ)せしむ。百官有司(ひゃっかんゆうし=文武百官)、よく朕の意を体して事に従い、施設の緩急、その宜(よろし)きを得、もって衆庶(しゅうしょ)をして、永く治平の慶(けい)に頼らしむることを期せよ。
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<現代語訳>

 余は、東洋の平和を永遠に維持し、大日本帝国の安全を将来にわたって保障することの必要を念じ、また常に韓国が、禍乱(災いや混乱)の原因となることを見て、すでに余の政府に、韓国政府と協定(日韓議定書および3次にわたる日韓協約)を結ばせ、韓国を帝国の保護下に置き、災いの源を根絶して平和を確保することを期した。

 それ以来、四年あまりが経過し、その間、余の政府は、鋭意、韓国での施政の改善に努め、その結果にも、見るべきものがあるけれども、韓国の現体制は、なおいまだ治安の保持が完全ではない。(そのことへの)疑いと恐れの念は、日常的に韓国内にあふれ、民衆も安心して生活ができない。公共の安全を維持し、(韓国)民衆の幸福と利益を増進するために、現体制に革新を加えることが不可避なのは、一目瞭然となった。

 余は、韓国の皇帝陛下と共に、この事態に臨み、韓国を挙(あげ)て日本帝国に併合し、それによって時代の流れの要求に応ずることもやむをえないと考え、ここに永久に韓国を日本帝国に併合することにした。

 韓国皇帝陛下、及びその皇室の各員は、併合の後といえども、相当の優遇を受けるべく、韓国の民衆は直接、余の安んじいたわる政策のもとで、その幸福を増加進歩させるべく、産業と貿易は、平穏な統治のもと、顕著な発達を見ることになるだろう。このようにして、東洋の平和は、併合によって、いよいよその基礎を強固にするにちがいないことは、余が信じて疑わない所である。

 余は、特に朝鮮総督府を置き、そこで余の命令を承(う)けて陸海軍を統率し、諸般の政務を統括させることにした。文武百官は、よく余の意を体して任務に従事し、施政設備の厳しくするところ緩めるところを、ほどよく運営して、一般庶民が長く平安なる統治の恵みに頼れるようになることを期せよ。


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