第二弾(1):『百万人のサタニズム』

★ 第二の本能・悪魔のサディズム

 第二章は、いきなりショックな情報ではじめよう。

 例の「酒鬼薔薇聖斗」だが、インターネットで流された供述内容によれば、被 害者の生首を自室にもちこみ、それでマスターベーションをしたらしい。これが 本当なら、非常に分かりやすく、しかも恐ろしい悪魔主義的な行為の実例があが ったことになる。

 変態という言葉で、簡単にかたづけるなかれ。これは悪魔に支配されてしまっ た者の典型的な行為なのだ。画に書いたような魔人ぶりといってよい。もっとも 悪質な変質者だが、変質者というものは、オナニーであろうとセックスであろう と、自分にとって最も強い快感を得るためだったら、想像を絶する行為だって、 なんだってやるものなのだ。

 もちろん、それはノーマルな性欲からは、ひたすら隔たっているが、味わう暗 黒の快感の強さは、麻薬的といってもよい。とりこになって抜け出せず、罪悪感 を覚えなくなったら、おしまいである。それこそ、死後に無間地獄に、好んで落 ちること必定で、もっとも深い地獄ゆきのパスポートをファーストクラスでもら えることになる。 

 邪悪な行為に快楽を覚え、射精や性的エクスタシーを頻繁にくりかえすと、そ れは食欲・性欲などの自然な本能に続く《第二の本能》となる。すなわち、擬似 本能となって、最悪の場合、その人間の一生を支配してしまうのだ。

 なぜなら、本能となったからには、それに飽きることがなくなるからだ。本能 とは、それなしには生きられない機能である。悪魔の心に支配されたサディス ト・サタニストは、他人を残虐な目にあわせて傷つけ、血と恐怖と苦悶を見ない ことには、生きていられないのである。

 食欲が空腹を、性欲が性衝動を生み、それを満たすために人が生きるように、 サディスト、サタニスト(悪魔の波動に汚染されたもの)は嗜虐の欲里にから れ、それを満たすために生きる。

 ノーマルな人間が、食事や性交をするように、サタニストは他人を殺傷する。 そして、ノーマルな人間が、セックスで性的興奮と絶頂の快楽を得るように、彼 らは他人の殺傷で最も興奮し激しい快楽を味わう。

 ここでいう「他人の殺傷」とは、肉体の損壊のみをいっているのではない。イ ジメ、レイプなど、他人の精神を心理外傷によって傷つける行為もふくむ。人 を、悪意や害意、獣欲によっておとしめ、はなはだしい絶望や苦悩を味わわせる ことも、「殺傷」の中にふくまれる。

 人は肉体を傷つけられて死ぬこともあれば、精神を傷つけられて心が死んでし まうこともある。肉体は虐待されなくとも、精神を虐待された結果、その後の人 生を、不毛と虚無の暗がりに生きてしまうケースも多々ある。

 だから、ことは極めて深刻なのだ。肉体の殺傷ばかりに目を向けてはならな い。まことに重大な、精神の殺傷というテーマがあるのだ。それなのに、今の教 育制度も司法制度も、微々たる領域でしか、それらをとりあげていない。

 私は声を大にしたい。たとえ、肉体的に暴力はふるわずとも、不当な悪意によ る言葉やおこないも、罰をまぬがれるものではない。相手の一生に、故意に決定 的なダメージを与え、深刻なトラウマを形成するなら、それも立派な犯罪とみな すべきなのだ。

 このように、他人の身心に対し、破壊行為を働き、苦痛と絶望と腐敗を与え、 それを第二の本能とし、快楽にひたれるもの。これが、『邪悪』である。

 それゆえに、一度サタニズムの深みにはまり、その快楽につかまったものは、 ノーマルに戻ることはきわめて困難だ。

 恐ろしいことに、この世で、魔の快楽にくりかえし身をゆだねた者は、死後に とんでもないうきめに会うことになっている。生前に味わったアブノーマルな快 楽が、そっくりそのまま絶対値を保ち、地獄の苦痛となって、身にふりかかって くるのだ。

 この世でも、その快楽と苦痛の逆転現象の非常にわかりやすい例がある。麻薬 や覚醒剤の「禁断症状」である。相手を苦しめ虐待し、凌辱を加え殺傷すること で快感を覚えるサディストや悪魔主義者には、死後にとほうもなく念入りな報い が待っている。

 彼らは、生前の異常な快楽追及の罪悪を償うまで、ほとんど永遠に統くかと思 える間断のない激しい「禁断症状」に苦しめられるのだ。「酒鬼薔薇」は、わず か十五歳にして、そのルートをつっ走ってしまったわけである。なんとも、語る べき言葉がない。彼は、生きながら魔族の仲間入りをしたのだから。

 彼のような若くして魔人となる者が増える国家や世界のありようが、この先、 長く続くわけはない。それは、ちょっとでもものを考える人間なら、だれにでも 分かることだ。

 イギリスなどでは、七○年代から児童による幼児虐待、殺害事件が連続してい る。たとえば、十才の子供ふたりが幼児を誘拐し、殴るけるの暴行を加えて殺害 するといった事件が、二十年も前から今にいたるまで、毎年のように起こってい る。

 これら、子供による子供の殺人は、英国はじめ欧州でも、だいぶ前から切れ目 なく発生している。アメリカではもっと極端で激しい。少年による快楽殺人が頻 発し、何人も検挙され、裁判で争っている。銃の乱射事件で、何十人も死んでい るのが、最近の血なまぐさい顕著な現象だ。

 あろうことか、北米では悪魔教会も乱立しているし、悪魔にいけにえを捧げる ためと思われる無惨な事件は跡を断たない。邪教の信徒による幼児や児童の誘 拐・殺害は、南北アメリカにおいて、八○年代半ばから大変な問題になっている のだ。

 その辺の事情についでは『黒魔術のアメリカ』(アーサー・ライアンズ著/徳 間書店)という本がある。米国のサタニズムについて、より詳細に具体的に知り たい方は、そちらを参照されたい。

 このいわば子供どうしが共食いするという、はなはだしくデモーニッシュな世 情を、嘆いたり心配したりする人も多いが、ため息ついたり、頭をかかえても得 るものは何もない。得るものが何もないようなことは、これからする暇はない。 やせがまんでもいいから、毅然としていることが大切だ。

 悪虐非道にして、天・地・人ともゆるさざる罪業が、たとえ世界を覆いつくし たとしても、絶望するには値しない。

 天地の理法とか、正義や道理というものは、限りなく圧迫されて風前の灯にな ることはままある。だが、決して滅びるものではない。なぜなら天地の理法が滅 びたら、天使も人類も、また悪魔そのものも、この世界ごと存在しえなくなるか らだ。

 話が大きくなってしまったが、要は残る正義の炎はマッチー本分でよい。あと は、引火して爆発するガソリンやガスのタンクを探せばよいのだ。それはまだ見 つからない。しかし、必ずある。多くの日本人が、戦後、忘れてしまった(忘れ ようとしてきた)事柄の中に、とんでもない正義の爆発物がある。この著作の終 わりごろに、そのヒントをご紹介したいと思う。

 それを示す前提条件として、まず現状がいかに悪魔的なものに汚染されている か、知ることが必要だ。病気の容体と原因が分からないのでは、治療のしようも ない。

 それでは、これから悪魔の罠の手口の数々を、紹介してゆこう。悪魔の吐き出 す、見えざる毒グモの糸との静かにして激越な戦いは、すでに最終局面に近づい ている。

 張られたクモの巣のありかと、実態を知ることが肝要だ。それこそが、精神を サタニズムの汚染から回避するすべなのだ。 『敵を知り、おのれを知らば、百戦あやうからず』と孫子はいった。その通り、 これは日本人が自分と家族と子孫、友人たちの魂を守るために、ぜひとも必要な 見えざる戦略情報なのである。

★ 君の狂気は百万ボルト

 性格改造セミナーが、サタニズムの最も組織的な病原池であることは、すでに 公表した。それについて、より詳細に説明することにしよう。あなたの隣にも、 過去に性格改造(自己啓発)セミナーを受けた人間が、少なからず存在している はずだからである。

 筆者自身が、性格改造セミナーを受講したことは、前述した通り。当然のこと として、他の受講者のようすも、よく知っている。

 自分自身と他者のセミナー受講経験から抽出し、導きだした結論をまずお伝え しよう。

 性格改造セミナーを受け終え、その後遺症として残るマインドコントロールこ そ、性格改造セミナーの真の目的だ。それは私自身が体験し、通過してきた良心 破壊現象でもある。

 それらをふりかえって紹介しよう。以下の十の恐るべき心理状態は、筆者や知 人たちが受講後、数ケ月〜一年余という短い期間(1986年夏・初受講)だ が、確かに経験した内面の異変である。

 以下は、性格改造セミナーを受講したものなら、一般に露呈する態度である。 他人のひんしゅくを買う異常心理〜これが《性格改造》の真の姿なのだ。

《セミナー等で洗脳された者の内面の特徴》

)思いこみが極端に激しくなり、パラノイアックな言動が目立つようになる。 被暗示性(他人の影響を受けやすい伏態)がきわめて強くなる。
 ユーモアやふくみ、暗示や皮肉など、柔軟性のある表現が欠落し、通用しなく なる。また、極端から極端へと言動が移る一方、感情がひとつのことに固着する と、異常なこだわり状態を抑制できない。日常のこまやかな礼儀作法が失われ、 失礼無礼な態度を無自覚のうちにとる。

)本人の気分や、他人に与える印象や雰囲気が、常識的な変化の範囲を越えて ころころと変わる。その変化の落差が大きい。一種の憑依霊現象が起こっている と思われる。

)なんらかのマインド・コントロールを受け、たちのよくない精神汚染をわず らっている自覚がまったくない。悪しきものに操作されていることなど、想像も できない。

)ものごとの正邪を、まっとうに認識し分別することができない。正常な人間 には「奇異だ。異常だ。変だ」と判断できることも、そうとは感じられない。む しろ、他人がなぜそう思うのか、本気で不思議がったりする。

・ものごとを、自己に有利な、都合のいい形でしか解釈しない。ゆえに、人か ら批難されても、自分の言動がまちがっているとは思わない。常識的にいって、 自他における「悪いこと」「異常なこと」も、悪や異常としてとらえることがで きない。

)罪悪感と差恥心が、ひどく麻痺させられている。普通なら「恥かしい」と感 じる言動をとっても、いっこうに平気である。むしろ、それが「正しいこと・い いこと」に感じられる。

)正常な第三者の目から見て、明らかな罪や非常識に当たる言動を為しても、 それには何か理由があるのだから、ゆるされると思いこんでいる。理由さえあれ ば、何でもゆるされるし、自分の発意や願望によって、実践することは、ごく自 然に正しいのだと決めつけている。理由があれば、罪や邪悪とされることもゆる されるとする。

)ものごとの判断と実行にあたり、正常な意味での善悪は間題ではない。理 由・動機・行為の結果、いずれにおいても善悪は考慮されない。問題となるの は、ただひとつ。自分が想像(妄想や幻想)し、設定した通りに、願望・目的が どのていど違成されたかである。願望や目的の善悪は、判断材料の中にはまった く入っていない。

)自分の所属するセミナーや教団、グループヘの勧誘は善である。相手がどこ のだれであろうと、仲間は多ければ多いほどよい。賛成してくれるものは、無条 件でみな友逮であり仲間である。

10)食欲(空腹感)や性欲(性衝動)、隠れた悪しき(卑しい)願望など、本能 的欲望のコントロールが困難になる。禁欲主義の敵といってよい。ストイックな 態度や感性が麻痺させられる。

 以上を個条書きにしたが、要するに人工的に潜在意識を開いて、そのエネルギ ーを利用しようというのがセミナーのセッションの目的だ。建前上は、心の傷を 癒し、明るく健康的で、前向き・積極的な人生を再構築して、夢や願望をかなえ ようというわけである。

 ここで、人の精神エネルギーを電気に、潜在意識を発電所に、個人の顕在意識 を家庭の配電盤・コンセントにたとえよう。

 ユングのいう「集合無意識」に代表されるように、人の潜在意識には、発電所 ともいうべき、とほうもないエネルギーの源が渦巻いている。

 それは、普通の個人には巨大すぎるエネルギーだ。顕在意識が良心や常識、差 恥心といった形でブレーカーを配し、限度以上には精神エネルギーが流れこまな いようになっている。そうしないと、人としての精神構造が保てなくなる〜つま り、気が狂ってしまうからだ。

 潜在意識の生み出す百万ボルトを、顕在意識の百ボルト用のコンセントに流す わけにはいかない。

 ところが、性格改造セミナーは、意識のブレーカーをこわしてそれをやるの だ。方法は、各種の心理学や成功哲学などと重複するマインドコントロール・セ ッションを用いる。顕在意識のブレーカーたる良心や差恥心を麻痺させ、機能を 停止させるわけである。これが、どんなにあぶないことか、お分かりだろう。

 つまり、いくら大電流をかけても、ブレーカーが落ちないという、大変に危険 な事態が発生するのだ。大量の電流が、意識下からどっと流れてくる。

 そのため、一時的に受講生は潜在意識の強烈なエネルギーを受け、はなはだし くエネルギッシュになり、肯定的、前向き、猪突猛進な生き方ができるように錯 覚してしまう。

 しかし、それは本人の電力容量には、本来あわないものなので、いずれショー トしてあちこちが火をふき、結局、元のもくあみになる。

 よくしたもので、人の意識には、ブレーカーをこわされても、それを自己修復 する機能がある。たいていは早ければ一週間、普通は三ケ月ないし一年ぐらい で、また元と同じようになる。もちろん、人によってはもっと時間がかかるし、 常識麻痺の奇行をひきずるパ夕−ンもある。

 たいていは以前通りに、常識や差恥心、ついでにセミナー受講前までひきずっ ていたトラウマの数々も、ちゃんと無傷で戻ってくる。つまり、セミナーを受講 しても、潜在意識のエネルギーに目がくらんで、一時的な恥知らずになるだけ。 結局は何も癒されないし何も変わらない。これを立派な詐欺といわずして、何と いおう?

 だが、人によっては恥を忘れるだけでなく、精神異常を惹起するケースもあ る。たとえ、最終的に元に戻るとはいえ、その回復プロセスで、意識のショート による感電、火傷事故(つまり、偏執狂や誇大妄想狂になったり、以前からあっ た精神的な病が悪化する等の症状)が多発しているのも確かなのだ。

 また、自己の許容量を越えるエネルギーを意識下からとりだすので、その結 果、アンバランスな霊的感覚を誘導することにもなる。そのエネルギーめがけ て、悪霊や動物霊などがやってきて、憑依現象が起きることも、その業界では常 識事なのだ。

 はっきりいって、セミナーを受講した桔果、パラノイアになり、誇大妄想狂に なってしまった若い女性が身近にいた。要するに、性格改造セミナーは、一時的 に人工狂人をつくり、なおかつそれによってマルチまがいの金集めをするとい う、とんでもないシステムなのだ。

 表むきは、ダイヤモンドなる自己の本質を発掘し、すばらしい自分を発見する というお題目がある。しかし、高圧電流を家庭用のコンセントに、どっと流しこ んで家ごと丸焼けにしてしまう行為が、なんで「自己のダイヤモンドを掘る」な のか。「ライフ・ダイナミックス」、いやさアーク・インターナショナルさん よ。

 (※平成12年8月20日現在・セミナー関係を研究告発するおすすめサイト。「Saki's Homepage」を、ぜひ参照されたい。

   http://www5a.biglobe.ne.jp/~saki-k/

 八神も本年2月23日から、上記のHPの掲示板で、今回の原稿の一部を掲載の上、一ヶ月間にわたって、セミナー患者たちと筆戦を繰り広げた。八神のセミナー体験がいかなるものだったか、また掲示板上でのセミナー患者たちが、いかに異常か、ぜひ実例を過去ログからお確かめいただきたい。
 また、アークインターナショナル(1999年夏撤退)はじめとする、セミナー企業の種類ややりくち、現状の把握など、セミナー業界の批判的分析データも豊富なので、今回の原稿を読んで、興味を持たれた方は、ぜひ一度、ごらんいただきたいHPである。)

第二弾(2):『百万人のサタニズム』(続)